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『いよいよ工事が始まる新国立競技場』について

昨年、サッカーやラグビーの聖地でもある国立競技場の国際建築コンペが行われ、ザハ・ハディドという外国人の女性建築家の案が入選した。屋根付きでサッカーやラグビーのみならず音楽イベントも出来る多目的スタジアムだ。

しかし、この案は方々の批判を浴びている。日本建築界の大御所であり世界的な建築家でもある槇文彦などもその一人だ。批判の内容は形態そのものというよりも、そのスケールの巨大さにある。計画地の敷地11haは東京体育館の2.5倍、観客数は10倍となる。都市計画的には、神宮の一帯は大正15年に日本初の風致地区に指定され、都市景観と自然の調和を保全することが求められている。明治神宮外苑においては聖徳記念絵画館とそこに向かう道の両側に並ぶイチョウ並木がその中心であり、この地域のスポーツ施設は単なる脇役に過ぎないのだ。

槇文彦は、新国立競技場の巨大なシルエットはこの地域の調和が永遠に失われると指摘している。もっともこれは、コンペ案というよりコンペの条件としてプログラムを決めた官僚を批判していると言えるだろう。そのプログラムは多くの関連部局から提出されたものを単に積み上げただけのもので、その結果、高さ70M、屋内延べ面積28万平米という巨大建築を求めることになったという。

僕の仕事場も千駄ヶ谷にあり、神宮外苑はご近所だ。確かにイチョウ並木から見た絵画館の後ろにあのシルエットが見えるとしたら異様な風景になる事は容易に想像がつく。

歴史的文脈を考えてみても同様な違和感がある。国立競技場というのはラグビーとサッカーの聖地ではあるが、太平洋戦争真っ只中の昭和18年に出陣学徒壮行会が行われた、神聖な場所でもある。降りしきる雨の中を行進した学徒の多くは再度学窓に戻ることはなかった。

東京オリンピック以降、文科省が管理運営しているが、敷地の神宮外苑総体は明治神宮が管轄している。そもそも神宮外苑は明治大帝の遺徳を後世に伝えようと整備されたもので、それ以前は帝国陸軍の青山練兵場だった。いわば大日本帝国の栄華と崩壊、そして戦後日本の復活と繁栄という重層的な歴史が染み込んでいる土地でもある。そもそもスタジアムの為の土地ではないのだ。施設は主張せず、周りとの調和を求められる。

僕の周りの友人たちは皆、「まるで巨大なUFOが着陸したみたいに見えてしまい、都市を何百年の時を超える歴史的遺産とする思想からは全くそぐわないと思う。」という様な意見が多い。俳優の福山雅治がラジオで「あの競技場はオリンピックが終わるとどこかへ飛んでいきそうだ」と冗談を言っていたが、誰が見ても地についているようには見えないのだろう。

昨年末、参院予算委員会で新国際競技場に関する質疑が行われた。当初、1300億と見積もられていたが、競技場建設地整備のための既存の建造物の取り壊しやインフラの建設のため、さらに1700億円必要ということがわかり予算が膨らんだ。その為、下村博文五輪担当相は参院予算委員会で、競技場建設と周辺のインフラ整備ための3000億円という予算は「あまりに大きすぎる」との考えを示し、計画の縮小を検討することを明らかにした。

しかし僕の経験から言うと、計画時で倍になるものは実際の施工時点でもっと増えることになる。今の建築費の高騰は当分続くと思われるので、更に倍近くになるのではないか。そこまでの税金を使って環境破壊のような建物を建てるのは、はっきり言って「反社会的」だとも言える。

この案に違和感を感じているのは何も日本人ばかりではない。海外メディアも同様の批判している。ワシントン・ポスト紙は、「新競技場の計画は今年初めに東京都と政府により承認されたが、下村氏の発言はこの計画方針の見直しを明らかにしたものだ」と報じていた。ジャパン・タイムズ紙も、「新競技場の設備はすばらしいが、そのデザインは、建物を取り囲む明治神宮外苑の環境と調和せず、聖徳記念絵画館や、東京体育館などの他の公共建築物の存在を矮小化してしまう」と指摘している。

彼女を推した選考者には、イラク人女性建築家(ザッハはイギリス国籍のイラク生まれ)であるというところに無意識のバイアスがかかったのだろうか。審査委員長を務めた安藤忠雄のこのコンペにあたってのメッセージは以下の通りだ。

『日本を変えたい、と思う。新しい日本をつくりたい、と思う。もう一度、上を向いて生きる国に。そのために、シンボルが必要だ。日本人みんなが誇りに思い、応援したくなるような。世界中の人が一度は行ってみたいと願うような。世界史に、その名を刻むような。世界一楽しい場所をつくろう。それが、まったく新しく生まれ変わる国立競技場だ。世界最高のパフォーマンス。世界最高のキャパシティ。世界最高のホスピタリティ。そのスタジアムは、日本にある。「いちばん」のスタジアムをゴールイメージにする。だから、創り方も新しくなくてはならない。私たちは、新しい国立競技場のデザイン・コンクールの実施を世界に向けて発表した。そのプロセスには、市民誰もが参加できるようにしたい。専門家と一緒に、ほんとに、みんなでつくりあげていく。「建物」ではなく「コミュニケーション」。そう。まるで、日本中を巻き込む「祝祭」のように。』

これを読む限り、やはり日本における神宮外苑という肝心な文脈はかかれていない。審査員の入選作評で『周辺環境や自然との親和性に富んでおり、環境の時代の新しい建築の在り方を示していると考えられた。』とあるが、僕を含めてあれを見てそう考える人がどれだけいるだろうか。あの案がお台場あたりの埋め立て地に建つ施設なら良い。問題は何度も言うが「神宮外苑という文脈」なのだ。

国立競技場は3月5日に行われるキリンチャレンジカップの日本代表イベントを最後に解体が始まるが、プログラムを作った官僚や審査員達は罪深い。ジャーナリストの友人が「納税者の立場とすれば、1千億以上もかけながら変更の連続で中途半端なものが出来るなら、最初からもう一度やり直して欲しいものだがね。」と言っていたが、そう思っている人は少なくないだろう。【珍蔵】



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Author:urimasa
珍蔵:設計事務所経営。建築家。
サッカーファン。
(特にバルセロナFC)

万吉:元ジャーナリスト。投資家。
野球ファン。
(特に日ハムファイターズ)

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